第二回ユーラシア女性フォーラムは、9月19日から21日までの三日間、ロシアのサンクトペテルブルクで開催され、私も参加いたしました。(因みに第一回フォーラムは2015年に行われています。)女性の社会的な地位向上や活躍の場の拡大、貧困などについて3日間に35のセミナーが行われ、ロシア連邦議会の議長、ヴァレンティ―ナ・マトヴィエンコ女史のホストのもと、プーチン大統領もスピーチを行うなど、政府と民間の両サイドから6000人のパワフルな女性たちが集う世界規模のフォーラムとなりました。
私は、今年の初頭にロシア人マエストロと共演したご縁から参加のお話をいただき、マリインスキー劇場などでの演奏を2回行う予定でサンクトペテルブルクに入りました。私がこの街を訪れたのは建都300年で世界中の要人たちがペテルブルクに集結した2003年5月末、サンクトペテルブルク交響楽団とショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲を共演したのが前回でしたから、ちょうど15年ぶりです。その時に比べて、歴史ある街並みにはそれほど変化がないと思いましたが、雰囲気は大きく変わっていました。街には元気な若者たちが溢れ、広場ではスピーカ―を通した大音響でポップ調の音楽が演奏されていましたし、レストランやブティックも、ヨーロッパの他の国と変わらぬ雰囲気でサービスを提供していました。
第一日目、9月19日には有名なマリインスキー劇場でガラ・コンサートが行われ、前半はオペラのアリア、後半はヴィヴァルディの「四季」を使ってアレンジしたモダンなバレエが演じられましたが、私は特別ゲストとして、ワックスマン作曲の「カルメン幻想曲」を演奏しました。会場は2013年にオープンした新しい方のマリインスキー劇場2、設備も美しく整っていて、劇場専属のオペラ歌手やバレエダンサーの中で演奏できたこと、そして観客の皆さんからも盛大な拍手をいただいたことは、素晴らしい経験となりました。
フォーラムはタヴリーダ宮殿で開催され、二日目には午前中に行われた会合の一つを観に行きました。日本からは生物物理学者の黒田玲子東大名誉教授もパネリストの一人としてお話しされ、安倍政権がアベノミクスならぬウーマノミクスという呼び名で、女性の活躍の場を広げる政策に力を入れていること、そして来年3月には東京でW20(Women's 20)が開催されることを知りました。そのほか、世界における女性の深刻な貧困などについても各国のパネリストから問題提起され、知らなかったことに少しずつ目を開かれた思いになりました。
三日目は、日本とロシアの文化交流のランチに参加、無伴奏で宮城道雄「春の海」とパガニーニの「ネル・コル・ピュ・ノン・ミ・セント」の短縮版を演奏。林文子横浜市長、大川順子日本航空副会長ともお話しすることができました。午後には「パブリック・リコグニション・2018アウォ―ド」が各分野から選ばれた13人の女性に授与され、私はカルチャー部門で受賞しました。この賞は直前まで公表されない仕組みになっていて、私もペテルブルクに入ってから初めて受賞を知り、大変名誉に思うとともに、この思いがけないプレゼントに今でも驚いています。林文子横浜市長、そして世界最初の女性宇宙飛行士、V・テレシュコーヴァさんも受賞されました。授賞式では、マトヴィエンコ議長から、美しい翡翠のトロフィーと賞状を受け取り、短く感謝のスピーチも致しました。世界中から集まったパワフルな女性たち、錚々たる方々にお会いできたことで、素晴らしい経験と刺激をいただいた3日間となりました。