軽井沢での録音の疲れを引きずったまま、23日から6日間、朝から夕方まで座り通しで聴き続けましたが、やっと今日の夕方ですべての予選審査を終えました。演奏した皆さんも、お疲れ様。
2次予選は、シュニトケの「ヴァイオリン・ソナタ第1番」という暗譜がかなり難しい曲も含まれていたのに、止まってしまうというようなアクシデントも全く起こらず、全員見事な頑張りでした。その分、今日の3次予選になると、かなり余裕がなくなってきたところがあったようです。
プログラムはベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ第3番」と、イザイの「無伴奏ソナタ第6番」。私自身はここ数年ベートーヴェンに対しての思い入れが特に深くなってきているところですし、イザイの第6番は軽井沢で録音してきたばかりなので、自然に聴き方も厳しくなってしまいます。イザイの第6番は、スペインの名手に献呈されているだけに、技巧的にも華やかで難しいパッセージの中に、スペイン風のハバネラのリズムが散りばめられ、和声的色彩も変化に富んでいます。ここのところを十分に理解し、表現してもらいたかったのですが、前後のパッセージのつながりがプッツリ切れてしまっていたり、強調すべきリズムが出ていなかったり、ハバネラのリズム感が曖昧だったり、和声の変化がはっきりと意識されていなかったりという演奏が多く、またベートーヴェンもピアノとの対話を意識していなかったり、3楽章が激しいのみで可愛らしさが表現されていなかったり、と正直に言って結構な欲求不満が溜まりました。でも何人かの演奏の中で、意識を共有する瞬間があり、私の気持ちを少しすっきりさせてくれました。
実際のリサイタルであれば、この一次から3次予選までのプログラムが丁度一晩のリサイタル分くらいの内容ですから、3日間に分けて弾いたにしても、よい経験になったでしょう。10月23日のオーケストラとの協奏曲にも期待しましょう。
私の方は明後日から秋田へ行き、国際教養大学での集中講義が10月4日から始まります。12月の中旬までの間に延べ45時間の講義をこなすのですが、今回は20人ほどの学生がレジスターしているようなので、例年のクラスより人数が多くマネージするのに一工夫を必要とするかもしれないということと、前回の講義から一年以上の間が空いているため、英語で講義する感覚が戻ってくるのに少し手間取りそうな予感もしています。
今回は11月6日の秋田アトリオン音楽ホールにおけるマリンバとのデュオ・コンサートに合わせて、11月5日に新実徳英氏が今回のために書き上げてくださった「マリンバとバイオリンのための組曲」について、アトリオン・ホールで一般公開(無料)の講座を行ってくださること。これは私がMCを務めます。私自身の恒例の公開講座は12月1日にAIU(国際教養大学)のレクチャー・ホールで、「バッハの無伴奏パルティータ、ベートーヴェンの「春」ソナタ、ヒンデミットの無伴奏ソナタの例からみるヴァイオリン・ソナタの変遷」(仮題)として行うつもりで、11月29日にはジュリアード時代の同級生のピアニスト朝川万里さんに「エリオット・カーターをめぐるピアノの旅」(仮題)を講義してもらう予定です。これらは一般にも無料で公開しますので、どうぞお気軽にお寄りください。