ニューヨークに来て一週間と数日が過ぎましたが、こちらは比較的涼しいので助かっています。この短い間に地震、ハリケーンの直撃と、結構刺激的な経験をしましたが、ニューヨークに着いて早々にマサチューセッツのバークシャー地方、ノースアダムスにあるMASS MoCA(マサチューセッツ現代美術館)を訪ねたことはとても深く印象に残りました。
バークシャー地方は自然の豊かな歴史ある地域です。ボストン交響楽団の有名な夏の「タングルウッド音楽祭」や演劇のフェスティヴァルなども行われていて、ニューヨークやボストンから避暑にくるお金持ちのための別荘やペンションが点在する豊かな町と、工場が建ち並び大勢の労働者が住むニューイングランドの工業地帯が混在していました。工業地帯のノースアダムスでは、使われなくなった広大な工場を1999年に現代アートの美術館として改装しオープン、前衛アートの中心として見事に再生させました。
やはり印象的なのは、その広大なスペースです。その広さは都市部の美術館では不可能でしょう。フットボール場ほどの広いスペースに土を運び込み、ドイツ人アーティストKatharina Grosse(1961−)がその土の山に直接ペインティングを施し、角張りそそり立った白い物体はミネラルの岩石のようです。別の惑星に降り立ったかのような感覚に陥ります。この作品は常設展示ではないので、2011年10月31日で終了します。
常設展示はSol Lewitt(1928−2007)。中期の作品に属する#422。
全部で15枚の色のパネルが並ぶのですが、4つの色(グレー、黄、赤、青)がまず基本になり、その中の2色を掛け合わせたものが新たに6色、3色の掛け合わせが4色、4色の掛け合わせが1色、左から右へ順番に並んでいます。左の写真は4つの原色が並んでいるところ、右の写真は手前から2色×1、3色×4、4色×1が順番に奥に向かって並んでいます。微妙な曇ったニュアンスのある美しい色調は、日本人の私の感覚にとてもしっくりきます。並んだ様は、歌舞伎の引幕を思い浮かべました。
http://www.massmoca.org/lewitt/walldrawing.php?id=422
後期の#822は、マットな黒とグロッシーな黒が壁の真ん中の曲線で2つに分かれている作品。強調された曲線のありようが、何故かしら北斎の浮世絵の波を私にイメージさせました。
http://www.massmoca.org/lewitt/walldrawing.php?id=822
インターンとして作品のガイドをしてくれた女性は、隣町ウィリアムズタウンにあるウィリアムズ・カレッジの学生でした。リベラル・アーツの名門校です。