演奏家にとって、演奏会用のドレスは衣装であり、仕事着でもあります。
やはり着ていて動きやすく、演奏の邪魔にならないもので、色彩やスタイルが演奏曲のイメージに合致していて、且つ、演出したい「私」のイメージにもあったものでなければなりません。それに、年齢によっても似合うスタイルは自然に変わってきます。
25才の時に着ていたものが、45才で似合うはずもありません。
私の場合、「つるし」で買うもの、仕立ててもらうもの、この二種類の方法でドレスを選んでいます。今の若い学生に「つるし」と言っても通じないことが多いのですが、いわゆる既製服、プレタポルテです。
仕立てていただくのは、20代の時から一人の方にずっとお願いしていますが、先日、20年前に作ったコンサート・ドレスの何着かをリメイクしていただきました。ここに、20年前の写真と、現在のリメイクしたものを着た写真を両方掲載いたしますね。
やはり数の少ない、特別な生地を使って作っていただいたドレスですから、すべて解いて作り変えるとまた息を吹き返し、まるで私と一緒に成長し、生きてくれている気持ちになります。一着のドレスと形を変えながらこのような長いお付き合いができるのも、演奏家人生の喜びの一つです。