今日はサントリーホールでマティアス・ゲルネの歌うシューベルトの「冬の旅」。この作品は、私の秋田での集中講義でも、必ず最後の締めくくりに取り上げています。ピアニストはマルクス・ヒンターホイザー。今日の演奏では取り分け15曲目の「カラス」から後、最後まで感銘を受けました。特に23曲目「幻の太陽」から最後の「辻音楽師」へは全く休みなしに繋がった曲のようにピアノが入り、ゲルネさんも繰り返し現れる単純なメロディを、ピアノの左手の5度の和音が打たれる毎に少しブレスを入れて、感情を絞り出すような歌い方。冬の旅の主人公の絶望感を美しい弱音で味わいました。最後の音が消えた後、願わくば10秒間はこの素晴らしいインタプリテーションがもたらしてくれた絶望感に静かに浸っていたかった!